2010.5.9 窓をあけて

瓦屋根がまぶしい。
ベランダ越しに見える遠くの屋根が、春の陽射しに白く反射して、僕は目を細めています。陽に映える葉は黄緑色。
木々に近づき、その下を歩くときは花や葉の形などに目が行き、季節の移り変わりを感じます。でも、それは人間側からの視点。
もうすぐ暑くなるかな。もうすぐ寒くなるね。
反面、一本の木でも、こんもりとした森であっても、遠くから眺める木は、何だかこちら側に話しかけてくるみたいに感じます。自然の語り部。僕たち人間が知らない世界。

さらさらと風に揺れ、彼らは僕たちに何を伝えようとしているのだろう。そよそよと揺れたり、わさわさと揺れたり。
さあ、飛び出しておいで。しんどくなったら木陰で休めばいい。木もれ陽の下で眠りなさい。
小さい頃、陽が暮れるまで遊んでいました。汗かきの僕はシャツもズボンもびしょびしょに濡らして土や泥まみれになって。転んだ石畳に手のひらを擦りむいて。でも、砂の入った爪の中には夢がいっぱい詰まっていました。

僕の身体は動かなくなり、もう想い出の中の僕をなぞることは出来ません。最初から知らなかったことならまだしも、経験したことが出来なくなるなんて。
想い出があまりにも大き過ぎて、簡単に忘れることはできない。消しゴムを使って何も知らない真っ白なページに戻すことはできない。
もちろん、想い出や淋しさを言い訳にしてはいけないと分かっています。

風に揺れる木々や真っ白な瓦屋根は僕に語りかけてくるようです。
僕はベランダの窓を全開にして、目を細めてそれを見ています。

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