2010.1.28 機関車おじさん

先日、プロペラおじさんのことを書きました。何年か前に機関車おじさんにも出逢ったので、今回はそのおじさんを紹介しましょう。
まだ杖をついて歩いていた頃のハナシですが、都内から電車に乗って帰宅途中でした。通勤ラッシュは過ぎ、人も疎らな時間帯でした。僕は座席に座ってしまうと、足の筋肉が衰えていて立ち上がるのが大変なので、ドアにもたれていました。

おじさんは途中駅で乗ってきました。ちゃんとスーツを着て手には書類カバンを持っていました。ドアが閉まったあと、おじさんは車内の空席を探すこともなく、くるりと向き直り、ドアに向かって立っていました。ドアにもたれることもなく、でも、離れて吊革に捕まることもなく、ドアにくっつきそうに近づいて立っていました。
僕はドアの端にもたれて目の前のおじさんを見ていました。外の景色でも見るのかな、と何の不思議も疑いもないままに。

おじさんは、ドアが閉まった真ん中のゴムの部分にキスをするのではないかという位に顔を近づけ、口を尖らせて、「ぷしゅー」と言いました。むむむっ?なんだ?なんだ? 僕は楽しくなってずっとおじさんを見ていました。おじさんは外の景色を眺めることもなく、ドアの真ん中のゴムの部分を見ています。そして時々、「ぷしゅー」、「ぷしゅー」と言っています。深呼吸ではないのです。明らかに意思を持って、ぷしゅーと言っているのです。むむむ~?なんだ?なんだ?なんだあ?

僕はいよいよたまらなくなってお祈りをしました。僕の降りる駅でおじさんも降りて~!もっと見ていたい~。
電車が僕が降りる駅に到着すると、おじさんも降りました。やった!どうぞ僕と一緒にエレベーターに乗って!
おじさんは僕の前を歩きながらエレベーターに乗り込みました。やった!他のお客さんと一緒に僕もエレベーターに乗りました。お願い!もう一度ぷしゅーやって!お祈りしました。おじさんはエレベーターのドアに向かって、顔がくっつきそうな距離で立っています。「ぷしゅー」おじさんはやってくれました。「ぷしゅー」真面目な顔で口を尖がらせて涼しい眼をしています。ドアが開き、おじさんは改札を抜けて歩いていきました。スーツ姿で皮製の書類カバンを持ち、至って真面目に歩いて行きました。

なんなんだろーなー。なんで、ぷしゅーなんだろーなー。機関車おじさん、それ以来お見受けしたことがありません。逢いたいなあ。世の中みんな幸せになります。 あ、また思い出した。今度は「席代わってくれおじさん」のオハナシをしましょう。
うひひっ。

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